三菱自動車で働くデメリット

・強烈な年功序列

昇進・昇格には強烈な年功序列制度が機能しており、同期入社の総合職社員はほぼ同時期に主任(最初の役職)に昇進する。誰かひとりが抜きん出るというより、同期で数名(1割以下)が同時期に主任・課長に昇進できないという感じである。逆に言うと、死ぬ気で頑張ってもあまり評価は変わらないので、歳をとるにつれて、ほどほどに頑張ろうという意識に染まっていく。また、後述の通り、プロパー社員の場合、一定のポジション以上からはガラスの壁が存在する。

・三菱御三家からの出向者

過去、リコール隠しを発端とする経営危機に三菱グループ御三家から救済された経緯から、現在では三菱東京UFJ銀行、三菱重工業、三菱商事からの出向者が重要なポストを占めることが通例となっている。これを社内では「天下り」と読んでいる。営業系は商事、経理系は銀行、法務系は重工からの出向者が多いイメージ。よって、新卒で三菱自動車に入社したプロパー社員が本部長や役員になるには実力だけではなく、そのポジションに天下りが入ってこない「運」も必要となる。特に事務系は厳しい。今後の業績改善次第では、天下りが減る可能性はあるがゼロにはならないと思われる。なお、入社して数年も経過してしまえば、こういった天下り幹部が存在することに違和感はなくなる。そして、非常に悲しい事実ではあるが、彼ら天下り社員の方がプロパー社員より総じて優秀である。
なお、現社長(相川哲郎氏)は三菱自動車工業の生え抜き社長であるが、相川社長は三菱重工の元会長(相川賢太郎氏)を父に持つ三菱グループのプリンスで、かつ本人は東京大学工学部を卒業した理系エリートであるという特殊事情を忘れてはならない。次期社長は三菱商事出身の某氏だと噂されている。


・給与(年収)水準が低い

平均的な年収モデルに関してはこちらのページを参照してもらいたいが、三菱御三家(三菱商事、三菱東京UFJ銀行、三菱重工)や自動車大手(トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車)と比較した場合、給与水準が明らかに低い。給与ベースは主任500~600万円、課長700~800万円、部長クラスでやっと年収1000万円に到達。これは、中堅規模のメーカーと同じくらいの水準である。大卒であれば、誰でも課長にはなれるが、部長にまで到達できる社員は少ない。その上である本部長、役員が更に難しいのは前述の通り。大半の大卒社員は課長でストップする。福利厚生としては、独身寮、社宅(どちらもボロくて狭い)と三菱自動車購入社員割引制度があるくらいで、特段良いものはない。なお、実質的な親会社である三菱重工(通称MHI)は、課長職で年収1000万円を超える。福利厚生も含めて、かなりの差がある。

・被買収リスクの可能性

日本の自動車業界はトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツダ、富士重工(スバル)、三菱自工の順番であり、経営トップ絡みの不正が摘発されたりしない限り、この先10年は、順位に変動はないと思われる。買収されるとすれば、最近、軽自動車の製造で提携等を行っている日産の可能性が高い(参考:NMKV)。そうなった場合は、カルロス・ゴーン氏のような社長がルノーから送り込まれ、リアルに「新しい上司はフランス人」になる可能性があるね、とたまに社員同士で話したりしている。
三菱グループだから買収される心配はないと思うかもしれないが、三菱ふそうが今どこの会社の傘下にあるのか、またその経緯を調べてみると良いだろう(参考:三菱ふそうトラック・バス株式会社)。なお、一般論として、企業が買収された場合、被買収企業の社員が日の目を見ることは、ない。

・日本国内での販売不振

街中で三菱のエンブレムを付けて走っている乗用車や商用車を見かけると得した気分になるくらい、国内で三菱車を見かけることは少ない。それくらい、国内では売れていないし、最近では少ないシェアが更に低下しつつある。統計調査で発表される月間車種別売上を見ても、三菱の車種は40位以内に辛うじて軽自動車が1車種入っている程度のことが多い。パジェロやランエボ(ランサーエボリューション)はまだしも、アウトランダー、デリカ、ミラージュ、i-MiEV、ekワゴン、ekスペース・・・社名に知名度はあっても、車名に知名度は皆無である(そしてランエボは最近生産を停止、パジェロは開発を停止した)。また中古車市場でも三菱自動車は人気がない。「三菱のクルマは故障しやすい」「燃費が悪い」という一般評価が固まってしまっているからだ。当然ながら、実際はそんなことはないのだが、イメージとは怖いものである。
ただし、これは当時の益子修社長による「選択と集中」戦略によりアジア新興国へシフトした結果でもあるので、仕方がないと思われる。国内シェアに固執していたら、現在立ち直っていなかったであろう。

・微妙なコンプライアンス意識

過去のリコール隠ぺい問題を発端に倒産寸前までいったことから、経営陣には「次やったらお終い」という強烈な危機意識があり、入社した時点からコンプライアンス教育は徹底され、各部署にコンプラインス担当者も設置されている。こうした体制は、外部にも積極的にPRされている。しかし、入社してからだんだんと分かってくるのだが、この法令順守意識は「上に怒られたくない」という意識が強いためであり、決して積極的に法令を守りたいという意識からの物ではなく、全体的に消極的な意識をもとに動いている人が多い。本当の意味でコンプライアンスが大事だと思っている(理解している)のは本社の一部の管理部門くらいで、全体的に校則の厳しい私立高校のような雰囲気であり、先生(上司)の言うとおりにしていれば良い、自分が怒られなければ良いという意識が強く見える。一番コンプライアンス意識が高いのは新入社員で、入社年度が経過するにつれ、その意識は「なあなあ」の空気に染まっていく。また、中途入社した人に聞くと、あれだけの不祥事を起こして世間からバッシングを受けた会社なので、社員はもっとガチガチに法令を守る意識が強いのかと思って入社したらそうでもなく、カルチャーショックを受けるらしい。


・トヨタ自動車の存在

前述の通り、三菱自動車は日本の上場企業の中で見た場合、国内有数の超大企業であり、売上2兆円という数字は、業界によってはトップクラスである(売上2兆円企業が「中堅」とか「中手」と呼ばれるのは自動車メーカーぐらいであろう)。しかし、日本の自動車産業には時価総額国内トップ、新興国のGDPすら上回る利益を叩きだす「トヨタ自動車」という怪物がおり、乗用車を製造・販売する限り、このトヨタと同じ市場で勝負しなければならないという宿命がある。開発、設計、製造、営業、販売、ブランド戦略、広告、デザイン・・・当然ながら、どの分野でもまともに勝負して勝てるわけがなく、どうしてもトヨタが手薄な市場を狙う戦略を取らざるを得ないが、そういった市場は、大儲けが見込めないため、トヨタが手を出していないだけなので、利益率は低くなる。

・ゆるさの代償

開発本部や設計部門は別として、大半の事務系社員は定時に退社することができ、有給を取得することを強く奨励されるため、結果としてプライベートは充実することとなる。また、仕事で失敗したり間違えたりしても、怒鳴りつけてくるような体育会系上司は基本的に存在せず、和やかな人が多い。与えられた仕事を言われた通りに定時までにミスなく仕上げれば、後は時期がくれば主任(30歳過ぎ)→課長(40歳手前)と後輩に抜かれることもなく年功序列で上がっていくため、だんだんぬるま湯が気持ちよくなってくる。プライベートを優先させ、三菱という名の知れた大企業でそこそこの給与をもらいながら、まったり過ごしたい人にとって、これ以上の会社はないと断言できる。しかし、その弊害からか、進んで自己啓発や業務改善に取り組む向上心を持った社員は少ない。時折、この人は優秀だなと思えば、御三家出向者か中途入社社員であることがほとんど。離職率は低いものの、同期入社で辞めた社員に理由を聞くと「もっとバリバリ働きたい」「自分の努力が認められる会社に行きたい」「もっと給料が欲しい」「御三家の植民地支配にうんざりした」などが多く、逆に「仕事がキツイからやめたい」という理由は聞いたことがない。


・中途採用社員の差別

社内には「御三家出向者>プロパー社員」というヒエラルキーがあるため、中途採用者は「御三家出身者>プロパー社員>中途採用者」と、二段下のレイヤーに配置されてしまい、その結果、昇進関係で極めて厳しい差別が行われている。プロパー社員が部長職に昇進するのが困難であるのと同じくらい、中途入社社員が課長職に昇進するのはハードルが高い。かつての経営危機の際に大量に退職した社員と、新卒採用を抑制した時期の穴埋めとして、毎年コンスタントに中途採用を募集しており、三菱というブランドもあることから、かなりハイスペックで優秀な人が入社してくるが、課長職にすらなかなかなれない現実と非管理職の給与の低さを目の当たりにし、数年で退職してしまう事例を何件も見てきた。新卒で入社した社員は離職率が低いが、中途の場合はかなり高いのではないかと感じる。人事(人財開発部)はこの点を見て見ぬふりをしているが、転職者が「三菱自動車に転職して良かった」と思えるようは待遇とチャンスの用意は必要であろう。

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